for little princess04


 莉奈の腕の中で息苦しさに潰されそうになりながら、志穂は苦笑と共に安堵に浸った。この、
世界で一番心地よい場所で、志穂は誇らしげに莉奈に語った。
「ねえ…私、浮気しないって莉奈との約束、ちゃんと守り通したよ……えらいでしょ?」
「えらいっていうか……ここまでガマンしたら、むしろ馬鹿」
 やや呆れた面持ちで、莉奈が容赦なく斬り捨てる。だが、次の瞬間、ふっ…と表情を緩めて
笑みをこぼし、志穂の頭を優しく撫でた。
「でも、約束守ってくれてありがと……志穂姫」
 さらりと名前の後ろに付いた敬称に、志穂はあどけない表情をきょとんとさせた。そんな彼女
を、莉奈が最大の愛をこめて抱擁する。
「やっぱり……志穂って私にとってのお姫様だよね。これからは、私も浮気みたいな真似は絶
対にしないから。ずっと志穂姫のことだけを愛しながら生きるから……この先、何があっても私
が志穂姫のそばにいてあげる。約束するね」
「莉奈……その姫って名前の後ろにつけるの……なんか恥ずかしくて、やだ」
 鼓膜の奥に『姫』と言う響きが残って、耳がひどくくすぐったい。くすくすと笑いながら、やっぱり
普通の呼び方がいいと、なるたけ可愛く…ちょっと子供っぽいカンジで駄々をこねてみた。効果
はテキメンだった。
「う〜ん……分かった。じゃあ、やめるね……」
 一方的に志穂の言い分が通って、莉奈は後ろ髪を引かれながらも断念した。この可愛すぎ
るお姫様に対して、異議を唱えることなど許されない。
 不相応な身分に祭り上げられた志穂だが、誰も側にいない時に限っては、姫呼ばわりされて
みるのも悪くはないと、ふと思い直して小さくはにかんだ。
「でもでもでも、たまにはいいよ……志穂姫って呼んでくれても」
 志穂の汗ばんだ短い髪に、ゆっくりと手櫛が通される。その優しい仕草を受けながら、今更な
がらに志穂は、自分達が親友の一線を越え、戻れない所まで来てしまったのだということに気
付いた。
「あのね、私…莉奈だけのお姫様になってあげる。そのかわり……」
 その先を言おうとして、言葉にブレーキが掛かった。もじもじと言葉が口の中で転がって、な
かなか出てきてくれない。いつもの歯切れの良さを失ってしまったように、さんざん口の中で右
往左往させてから、ようやく莉奈に伝えた。
「その…私の処女も、莉奈がちゃんと責任持って、いつか必ず貰ってね。……でもでもでもっ、
その時は絶対痛くしないで。本当にお姫様扱うみたいに優しく……それだけお願い」
 莉奈の指が、軽く志穂のあごを押し上げた。二人の唇が重なる間際、莉奈が志穂の耳に聞
こえるようにつぶやいた。
「志穂…、痛いのは仕方ないってば……」
 志穂の唇を軽く吸った。本格的なキスに移る前に、もう少しだけささやく。
「でも、それって一番大好きな人に、自分の大切なものを捧げたっていう証だから……。痛いけ
ど、すっごく幸せな感触だから……だから怖がらないで。ねっ、お姫様」
「……うん」
 素直に志穂が頷いた。莉奈にならば、この体の全てを預けてもいいと思った。夕焼けが赤く
照らす中、はかなげに投げ出した両腕を背の高い莉奈の首裏に力無く絡め、両目を閉じてか
かとを上げる。莉奈の唇の柔らかさを感じた。幸せを伝える感触に心を溶かす。
 ひとつに結び付いた唇から、莉奈の唾液が流し込まれてきた。下半身の唇から随分と愛液を
漏らしてしまった志穂に、一応の水分補給だ。唾液の分泌が追いつかなくなるまで、莉奈はつ
ばを紡いで飲ませ続けた。やがて補給が途切れると、本当に喉が渇いていたのか、ねばつく
唾液を求めて、志穂の舌が莉奈の口内に押し入ってきた。舌を絡めあいながら、唾液を求め
て応酬が続く。
 ディープキスにまぎれて、莉奈の両腕が志穂のブラウスを脱がそうとしてきた。ブラウスは彼
女に任せ、志穂は自分のブラジャーを外す。
 なぎさの机にブラウスが落ち、その上にブラジャーが置かれた。今、教室内にさらけ出された
志穂の小柄な肢体は、足元を上履きと靴下で隠しただけ。
 全くの無防備の姫の姿に、莉奈の興奮が高まった。
 荒々しく志穂の体を抱き寄せ、肉体同士の密着を強要する。その状態を左手だけで維持しな
がら、右手を志穂の秘所へと這わせた。股間に若々しく繁る陰毛はぐしょぐしょに濡れそぼり、
愛液にまみれた性器は可哀相なほど火照っていた。莉奈の指が処女の縦筋を強くなぞると、
『ぷじゅっ』と中に溜まっていた淫蜜が漏れ出してきた。
(こんなになるまでガマンして……苦しかったでしょうに、志穂……)
 莉奈の指が秘貝の口を浅くえぐった。決して乱暴ではないが、それでも志穂の肉体は狼狽を
見せ、上げていたかかとを落として、小さくたたらを踏んだ。
「痛かった?」
「ううん、全然平気」
 そう言って、莉奈の体を両手で軽く押す。そこに拒絶の意思はこれっぽっちも無い。申し合わ
せていたように、たやすく彼女の体が離れた。
「早く……莉奈も裸になって」
 促されるまでもなく服を脱ぎ始めている莉奈に背を向けて、志穂は窓際に寄った。夕日で染
まった窓の外の風景は、何だかとても遠くに見えた。
「し・ほ・ひ・めっ」
 早々に志穂と同じ姿になった莉奈が、背後から両肩をポンっと叩く。それでも志穂は振り向こ
うとはしなかった。寂寥感に捕らわれて、窓の外を……終わりゆく今日という日を眺め続けた。
 今まで莉奈との間に大切に紡いできた友情の日々を懐かしみ、明日からの愛情の日々に想
いを馳せる。
「こーら、志穂っ」
 莉奈が首を傾けながら二尾に分けた後ろ髪の片方を手にとり、物思いに耽っている志穂の
首筋をさわさわとくすぐった。志穂は飛び上がらんばかりに劇的な反応を示した。
「あひゃぁッ!?」
「わッ、ご…ごめんっ」
 予想を遥かに上回るリアクションに、莉奈がうろたえながら謝る。「もうっ」と志穂が表情をほ
ころばせた。
(莉奈…、私たち今日で“卒業”なんだね)
 相変わらず顔を窓の外に向けたまま、「コホン」と小さく咳払い。志穂は神父を真似た口調
で、粛々たる問いを背中越しに莉奈へと向けた。
「高清水莉奈、汝は久保田志穂をお姫様とし、健やかなる時も病める時も、心の底から愛し続
けることを誓いますか?」
「……誓います」
 返ってくる言葉は分かっていたのに、それでも志穂の鼓膜が、嬉しさのあまり麻痺しそうにな
った。
 志穂の体が後ろから優しく抱きすくめられた。背で潰れるたわわな果実のサイズに、少し劣
等感を覚える。
 志穂は軽く上半身をひねって、背後の莉奈とキスを交わした。誓いが成立する。長めのキス
のあと、二人の唇が唾液の糸を引きながら離れた。
「それじゃあ……莉奈に……あげるね、今日…ここで……」
「志穂……?」
 莉奈の眼差しが困惑に揺れた。
 再び窓の外の風景に視線を戻して、志穂は夕日に焦がされたオレンジの空を見上げた。
「学校を出る前に……ちゃんと莉奈のものになっておきたいなぁって思って……」
 ぽつり、と胸の内を晒した。
 短い無言の間を挟んで、誘惑に堕ちた莉奈の唇が首筋に降りてきた。唇を鎖骨のほうへと
滑らせつつ、汗ばんだ体臭を胸いっぱいに嗅いでいる。
(志穂っ…私……おかしくなりそうっ!)
 世界で一番大切にしてあげたいのに……このままだと本当にこの場で犯してしまいそうだっ
た。
 心が狂おしいほどに志穂を求める。胸の奥で、心拍数が緩やかに上昇する。志穂の首筋に
唇を走らせながら、何度も熱い溜息をこぼした。
 今すぐにでも志穂の大事な部分に愛し合う者同士の証を刻みたいが、わずかに生き残って
いる理性が粘り強く拒否を続けた。
(ここ…教室なのに……こんなところで志穂の処女を? ダメよっ!)
 皮膚で感じる莉奈の呼吸が、随分と荒く乱れている。彼女の理性が限界に来ているのを感じ
ながら、志穂は莉奈の腰に密着したヒップを揺すって、挑発めいたおねだりをした。
「がまんしなくていいの。早く来て……莉奈っ」
 臀部の軟らかな脂肪に、濡れた陰毛の感触がさわさわとこすれる。志穂は発情した牝猫の
ように尻をくねらせて、莉奈の中に残っていた最後の理性を溶け崩した。
「志穂ッ!」
 噛み付くように名を叫ばれ、一瞬ビクッ!と身を固くした。志穂の両脇から、莉奈の両手が強
引に差し込まれてくる。
 まだ胸を飾り始めたばかりのふくらみが、背後から容赦の無い搾取を受ける。志穂の胸を力
任せに鷲掴む莉奈の指は、乳房の浅い肉付きを抜け、肋骨にまで食い込んできた。
「あくっ…うっ……くぅ……」
 悲鳴はくぐもった響きで唇から洩れた。乳房を潰され、肋骨にめり込んでくるような痛みに、
満足に呼吸もできない。
(痛いっ…痛いぃっ……!)
 餓えている狼の前に、わざと美味しそうな肉体をちらつかせたのだ。どんなに乱暴な食べ方
をされても仕方が無かった。感情に支配された莉奈の暴走を、全くの無抵抗で受け入れる。
 閉じた瞼の裏で涙目になった志穂の視界を、遠くから射す夕日が臙脂色に焼く。
「志穂…志穂っ…志穂っ……」
 背後から、うわ言のような呟きが聞こえてきた。熱くて熱くてたまらない莉奈の声音。それは、
もうどうしようもなく、狂おしいほどに志穂を求めていた。
「莉奈ッッ!」
 胸が張り裂けそうな切なさに駆られ、肺の中の全ての空気を絞り出して彼女の名を呼んだ。
乳房を苛む苦痛も快感へと変わってしまうほどに、今この瞬間、全身全霊で莉奈のことが愛お
しい。
 体を支えるために窓ガラスについた両手が、背後からしがみついてくる莉奈の体重も引き受
けて、ズルズルと小さく滑っていく。
 気が付くと、莉奈が密着した腰を揺すって、志穂の尻に興奮に潤んだ秘所を打ち付けてい
た。若々しい肉厚の尻に、淫らに煮えた蜜がなすりつけられていく。
(セックスしてるみたい……)
 肉欲にまみれているとはいえ、まぎれもない二人の愛が紡ぎ出した真摯な行為だ。全身を走
り抜く幸福感に、瘧(おこり)のような小さな震えが止まらない。溢れ出す気持ちを抑えられず、
嬉びで決壊した瞼から涙をこぼして、志穂はすすり泣いた。
 乳房を揉み潰した状態で強張ったままの莉奈の指を、志穂が一本一本引き剥がしていっ
た。痛みに耐えかねた、というわけではない。
「ねぇ、莉奈……、繋がっちゃおうよ、私たち……」
 涙目のまま志穂は、莉奈の手を引き、自分の下半身へと導いた。ヘソの辺りを過ぎると、莉
奈は自分の意志で手を下ろしていった。
 志穂の大切な部分を目指して、指先が下腹を這い下りていく。縮れた陰毛の感触に、いった
ん進みを停め、細指に絡めるように梳いてみる。
「…もじゃもじゃしてて…恥ずかしいの」
 ややうつむき加減で、志穂がポツリと洩らした。
 莉奈は、志穂の髪に顔をくっつけるように近づけ、匂いをスンスンと嗅ぎながら言葉を返す。
「そう? 私は、この指触りがなんかいやらしくって好き」
 志穂の陰毛をいじりつつ、指先がさらに下へと向かう。ぬめりを伴った湿り気が指に伝わって
きた。志穂の一番大切な部分を指先に感じる。
 志穂の身体に傷をつけることに、微かな躊躇いが生まれた。だが、そんな莉奈の手に、志穂
がそっと右手を重ねてきた。
「莉奈……いいよ。早く私の中に入ってきて……」
 幸せの涙を、左手の人差し指の背で交互に拭う。その手が背後から優しく奪われた。涙で濡
れた指に、莉奈が唇を寄せてきた。指の上をなぞる柔らかなキスの感触……。
(志穂……本当に心から愛してる)
「いくよ、志穂……」
 莉奈が、ごくり…と喉を鳴らしてツバを飲んだ。緊張と興奮で、ぶるぶると情けなく手が震えて
いる。
 莉奈の指がゆっくりと大陰唇を割り、内側の粘膜をまさぐる。そこは、すでに莉奈に純潔を捧
げる瞬間を待ちわびて、蒸せるほどに熱く濡れそぼっていた。
 挿入する膣穴を探す指が、志穂のクリトリスに触れた。
「あぁん…ッ」
 子猫のように甘い喘ぎ声が志穂の口を突く。下半身が溶けてしまいそうになる危険な快感
だ。
「莉奈、もっと下…私の中で一番熱くなっているところ」
 おそるおそる指先の感覚を頼りに、莉奈が一番熱い部分を探り当てた。そっと当てた人差し
指に力を込めてみると、ぬめった蜜が潤滑油となって、するりと志穂の中に沈みこんだ。
「うくっ…!」
 初めて進入してきた異物に、全身が硬直した。膣肉がキュッと収縮し、莉奈の指を拒もうとす
る。
 莉奈はいったん指を引かせて、志穂の緊張を解きほぐそうと、秘所へ優しい愛撫を加えてい
った。卑猥なよだれを漏らす縦筋に沿って、ゆっくりと時間をかけて指先を往復させ、志穂の反
応を窺いながら、時にはクリトリスを軽くさすってみる。
「あぁぁ…莉奈ぁ…莉奈ぁ……」
 さらにムードを盛り上げるために、志穂の耳たぶに唇を軽く付け、「チュッ」と音を立てて吸っ
た。耳元で交互にキスの音が鳴るたびに、志穂は甘い鳴き声を上げた。
 恋人同士で奏でる悦楽のムードに、志穂の心が酔いしれる。愛情のこもった手の動きを受
け、膣の奥も随分と快感で蕩かされている。しかし、莉奈の指が、志穂の中に潜り込もうとする
と、やはり膣が締まって、進入を固く拒んでしまう。
「ごめん…私…ホントに莉奈に今すぐ来てほしいのに……体が言うこと聞いてくれないの……」
「うん、分かってる」
 肉体はまだ怖がったまま力み続けているが、彼女の気持ちは、莉奈の手をしどけなく濡らす
愛液の熱さで、きっちりと代弁されていた。
 お姫様の裸身を愛しげに抱き締める。世界でたった一輪、莉奈のためだけに咲く花は、今は
まだ蕾だ。小柄な肢体は、幼さをあちこちに残している。本当は、この体がもう少し大人になる
まで、処女のままでいさせてあげたかったのだが……。
「志穂、ちょっと痛いけど…我慢してて」
 処女の鍵が掛かった膣口に、再び指を這わせた。熱く潤んだ鍵穴に指を差し込んで、ゆっく
りと開錠を試みる。
「うあ…あうぅぅっ、くッ!」
 窓ガラスについた志穂の両腕が突っ張る。
 また膣肉がきつく収縮して、指の進入を拒もうとしている。しかし、今度は力を緩めない。愛蜜
を煮え立たせた熱い部分の奥を目指す。莉奈の指が固い処女肉を押し開きながら、徐々に志
穂の中に迎えられていった。
「うぁ…ああ……あぁーッ、あぁぁッ!」
 志穂の汗ばんだ体の内側を、びくびくびくッ…と痙攣が走り抜けた。
 莉奈のすらりとした細い指は、処女膜の襞を破くには到らなかったようだ。引き裂く痛みも出
血もなく……。しかし、初めて膣をこじ開けられるショックは、志穂の心に想像していた以上の
緊張を強いていた。
 秘所に穿たれた一本の指が、だんだんと自分の中に収まっていくのを、志穂はまるで他人事
のように感じていた。
「……ほら、志穂、私の指…奥まで入ったよ。ねぇ、分かる?」
「う…うん……」
 どこか放心したような返事だ。びくん…びくん…と小さな痙攣だけが志穂の体を支配してい
る。焦点の合っていない両眼は虚ろに夕日を見ていた。
「志穂の膣(なか)、すっごく熱くて指が熔けちゃいそう……」
 挿入した指が溺れそうなほど、膣いっぱいに溢れた熱い蜜。飴のように粘りつくそれを、小さ
な膣壺の中で、莉奈の指がゆっくりとかき回した。
「あぁ…あっ」
 志穂の思考が、徐々に回復の兆しを見せる。そして、膣襞を優しく擦られた途端、目が覚め
たかの如く喘いだ。
「入ってるッ! あぁ……莉奈の指入ってるぅぅッ!」
 莉奈の指が、濡れた膣の中をまさぐっている。体の内側から響く官能的な感触に、全身を震
わせて、歓喜に沸騰した。