心に降る闇色の雨02
満は脱いだ端から制服やスカートを薫のひざの上にぽんぽんと置いていく。それを姉のよう
に畳んでやるのは薫の仕事。
ソファーに寝そべって、徐々に露わになっていく薫のカラダを愉しむみたいに眺めながら、満
が足首までずらしたショーツから右足だけを引き抜く。そして、ショーツ自体は、だらしなく左足
首に引っ掛けたまま放置。
「ちゃんと脱ぎなさい、満」
「それって命令?」
「……またお尻ぶつわよ」
「んもう…」
不満げにブンッ!と蹴り上げた左脚から、ショーツがすっぽ抜けて宙を舞った。天井近くまで
飛んだのち、見事薫のひざの上に落ちてきた。
「……なんて脱ぎ方……」
呆れた薫が、べったりと愛液で内側を汚したショーツを手に取った。
「…………」
その湿りを指先でなぞって、薫がわずかながらも興奮を表情に滲ませた。チラリ、と満のほう
に視線を送ると、イタズラな笑みを浮かべて薫の反応を窺がっていた。
すぐに満のショーツを畳んで、もはやソックスだけの姿となった彼女を追うように自分の下着
に手をかけた。
「ねえ、薫……いつからしたいって思ったの?」
満が好奇心で尋ねてみる。いつもは淡々と自分のイケナイ秘め事に付き合ってくれている薫
が、どうして今日はその気になったのか? 彼女が欲情を感じた瞬間に興味が湧いた。
(わたしのお尻を叩いている時? それともわたしのお尻を舐めている時?)
とりあえず、満は前者希望と心の中でチロリと舌を出した。……痛いけれども、アレはアレで
慣れてしまえば刺激的に楽しめそうだった。行為の暴力性が満の牝(メス)の部分を燃え上が
らせる。
だが、薫はその問いには答えず、
「……わたしだって、たまには愉しんでみたいわ」
無愛想な表情と声で、満から視線をそらして告げる。
答えをはぐらかされて、しかし、それにこだわるでもなく、満は薫の顔を見上げて呟いた。
「ふぅん、でも珍しいわね。薫がしたがるなんて」
「文句あるの?」
均整のとれた肢体を堂々と晒しつつ、ジロリと満を睨んだ。
なんとなく威圧された満が、怯みながら戸惑う。
「いや、無いけど。……なんで、そんな喧嘩腰なの?」
真っ白な背に流れる髪は、青みがかった瑠璃の色。裂帛の気合と共に敵を薙ぎ倒す腕は、
とてもそうは見えない程にほっそりしている。スタイルは満と似かよっているものの、身長が高
い分、それに付随して長く伸びた脚線美は、薫のほうが上である。
胸を隠す腕からこぼれそうになる二つの白い果実も、満のものと比べてやや大きめだ。
薫の視線がまた、つ ―― っと横へそれて流れていった。満が視線の先を追ったが、そこに
は何にも無い。
「もしかして薫、恥ずかしがってる?」
「……ごめん。満の裸は見慣れてるけど、自分の裸を見られるのは慣れてなくて」
「別に謝らなくても」
満がソファーに両手と両ひざをついて、ゆっくりと身を起こす。猫っぽい、しなやかな動作。
尻尾を振る代わりに腰をわずかにくねらせて、四つん這いで薫のカラダにすり寄った。ソファ
ーの端へと追い詰めた薫の肩へ頬をすりつけ、スベスベとした肌の感触を楽しむ。
「いいんじゃない? わたしも、薫が気持ちよくなってる声、聞いてみたい」
満が、胸を隠している薫の腕を押し下げて、そこへスルリと顔を滑り込ませた。
「あっ、こらっ」
かすかに顔を赤らめて、薫が声を上げた。しかし、その時にはもう、胸先のなめらかな突起
は、満の口にくわえられてしまっていた。
薄い桜色の乳首を、満の舌がちろっ…と舐め上げた。くすぐったい程度の快感も、慣れてい
ない薫には、電気を流されたみたいに感じた。
ゾク…ゾクゾク……ッッ!!
背筋がビクッと震えそうになるのを全身に力を込めて耐え、口を割りそうになった喘ぎ声は、
下唇をギュッと噛んでこらえる。
満の唇が、『ちゅる…』と湿った音を立てて、乳首を根元まで吸い上げた。
(あっ……)
薫は、眉間にシワを寄せて顔を背けた。喘ぎを熱っぽい溜め息に変えて、ゆっくりと静かに吐
いていく。……が、満が『ぢゅぢゅっ…』と唾液の跳ねる音を絡めて、遠慮なく乳首にむしゃぶり
ついてくるせいで、時折息が大きく乱れた。
「満……もっと静かに……っ……音立てないで……吸いなさい。は、はした……ない……じゃ
ない」
震えそうになるのを無理やり抑えつけた声で、薫が注意した。
上を向かれたら、情欲に溺れた表情を見られると思い、満の後頭部で両腕を交差させて、胸
へと押さえ込んだ。
「んっ、薫のおっぱいって、むにゅむにゅ軟らかくて……ンッ、美味しい」
乳首に深く吸い付くかたわら、もう一方の乳房を手で揉みしだく。
(ン〜〜〜〜〜っっ……)
薫が歯を噛み締めて、快感の声が出そうになるのをこらえる。薫の怜悧な表情が、甘美な悦
楽に溶かされているさまは、聖女が神に隠れて禁を犯しているみたいで、ひどく背徳的でなま
めかしい。
満に乳首をしゃぶられるたび、彼女の後頭部に絡めた腕が小さく震えてしまう。
(マズイ……満にバレる)
そう思った薫が、訊かれたわけでもないのに、言い訳をうわ言のように口にする。
「くすぐったいから……くすぐったい……くすぐったいだけよ……」
薫の胸へ密着して、乳首をちろちろ舐め上げていた満が、その様子を不審に思った。
コリコリと充血した乳首の先っぽへ、カリッと軽く歯を立ててみる。
その瞬間、声こそ出さなかったものの、薫の背筋がビクンッ!と仰け反った。
(ふ〜ん?)
手で弄んでいたほうの乳房の先端を、形の良い爪先でピンッと弾いてみた。
「やめ……てっ」
薫が上半身を身悶えさせて、彼女には似つかわしくない弱々しい声で訴える。
満の頭を押さえつける両腕には、ほとんど力が入ってなかった。片手を差し入れて、内側か
ら軽くその両腕を解いた満が、顔を薫へと近づけた。
「ごめんなさい、薫。わたしったら下手で全然感じられなかったでしょ」
わざとらしく謝る満が、今気付いたと言わんばかりに「あら?」と声を上げた。
「薫、どうしたの? 顔が真っ赤じゃない」
「…………」
薫は無言を返した。
満の紅い眼差しが、妖しく細められた。口元に浮かべた笑みは、チェシャ猫の微笑だ。
「もしかして、気持ちよかった?」
「…………」
薫は無言で無表情。ただ、顔は変わらず、羞恥の炎に焼かれたように赤い。
満が右手の人差し指で、そのアゴの下をなぞった。
「くすぐったいだなんて嘘ついて……」
その指が、喉へと滑り落ちる。
「いつもわたしが口にしてるみたいに、気持ちいいって……」
指先が胸の谷間をなぞって、ヘソへと到達した。しかし、まだ止まらない。
「言えばいいのに……?」
薫の下腹部を指が這い下りていく。そのすぐ下は、さわさわと繁った恥毛の部分。さすがに焦
った薫が、サッと手を伸ばして、満の腕を掴んだ。
「ねぇ、薫、気持ちよかった?」
満がさらに目を細めて訊くが、薫はそっけなく返すだけだった。
「別に」
次の瞬間、薫の無表情が崩れた。とめる間もなく、満の右手が強引に太ももの間へと差し込
まれた。満の腕を掴んでいるはずの手に、力が入らない……。
「ああっ!?」
噛み締める間もなく、喘ぎ声が上下の歯を割って口から洩れた。
バッともう一方の手で口を塞ぐも、既に遅い。
「……みっともないっ」
薫が、快楽と羞恥の入り混じった表情で吐き捨てた。
かろうじて気丈さを保っているが、あらぬ方向に飛ばした蒼い眼差しに、いつもの強い光は無
い。
上気した顔で、なおも無表情を保とうとする薫の様子が面白いらしく、満の口からくすくすと笑
いが洩れる。薫はくやしそうな色を蒼い瞳に浮かべながらも、石のようにじっとしていた。
「そんな……お地蔵さんじゃないんだから」
薫の両太ももの間で動かす指を休めずに、満が軽く溜め息をついた。ソファーから両脚を降
ろして、薫の裸身にもたれかかった。
「……お尻、大丈夫?」
喘ぎ声が出そうになるのを抑えつつ、薫が静かに訊いてくる。
「うん。薫がペロペロしてくれたおかげで、だいぶマシになった」
そう言って、満が薫の肩へちろちろと小さく舌を這わせた。微かに舌に乗る、薫の汗の味。
「おいし…」と一言つぶやいてから、彼女の背に流れる豊かな青髪に顔をうずめた。髪を数本
まとめて唇の先で食み、上から下へ、ゆっくりと梳いていった。
すっかり水溜りのようになった薫の秘所で、満の指がクリトリスを相手に戯れ続ける。声は我
慢できても、全身に走る官能の疼きはとめられないらしい。薫がビクッと小さく背をしならせた。
満が別の髪を唇に含み、またゆっくりと梳いていく。薫の背が、びくんっ!と震え、満の口から
はらりと髪が落ちた。
「ところで……いい加減出したら、声」
「…………」
無言を貫く薫の秘所から、満が手を引き抜いた。指先にべっとりとまとわりついた粘液。その
手を薫の顔の前でひらひらとさせて、
「こっちは、素直に気持ちいいって言ってるわよ」
薫は顔を背けて、固く両目を閉じた。
どうしたものかと、満が苦笑する。
「はぁぁ……手がべとべとになっちゃったわ」
「……洗ってくればいい」
「面倒よ。薫の髪で拭いちゃおっと」
バッと薫が身を仰け反らせて、満から距離を取った。
「あはは、冗談よ冗談」
「満なら、本気でやりかねない」
真面目な顔で警戒する薫へ笑いかけ、濡れた手を顔に持っていって匂いを嗅いだ。
「ふ〜ん、これが薫の匂い……」
もう少し顔へ近づけて、満が濡れた指先をペロリと一舐めした。
うっすらと舌を突く甘酸っぱさ。……淫らな気持ちで潤う薫の膣粘膜の味わい。汗よりも生々
しいヌメリを舌の上で転がす。
「やめて」
薫がその手を掴んで、満の顔から乱暴に引き剥がす。「あら、美味しいのに勿体無い」
機嫌を悪くするでもなく、喉を撫でられた猫のような顔で笑う満。愛液に濡れた彼女の指を、
薫が自分の手の平でゴシゴシと拭う。
「汚くなんてないわよ、薫? 初めて舐めてみたけど、薫のって……ふふっ、随分とイヤラシイ
味してた」
「二度と舐めたりなんかしないで。口にばい菌がつく」
「つかないわよ」
そう言って、するりと引き抜かれた手が再び薫の秘所へと差し込まれる。まだ、先ほど戯れた
際の淫靡な熱が残っていたらしく、満の指先が温かく湿った。
「ンッ ――」
薫が視線を伏せ気味にして、長い睫を震わせた。しなやかな指の動きが、愛液を漏らす恥裂
を軽く割って上下に動く。
「それよりも、声……そんなにわたしに聞かせたくないの?」
満の紅い瞳が、ジーッと薫の目を覗き込んだ。ぐっしょり濡れた淫肉を撫でさする指の動きは
休めずに、ただひたすら彼女の瞳を見つめる。やがて、その視線の圧力に押し負けたみたい
に、薫が恥じらいを含んだ流し目と共に告白した。
「……わたしは、満みたいに可愛くないし、声だって全然色っぽくない。だから、わたしなんかが
感じてる姿を晒しても滑稽だと思って……ごめんなさい」
言葉がだんだん尻すぼみに小さくなっていき、最後は小声で満に謝って消えた。
それに対し、満はきょとんとした表情になる。
可愛くない? 色っぽくない?
(一体どこがよ……)
満が心の中でボソッとこぼした。
そもそも二人とも、外見的には魔性の域に達した美少女だ。
炎よりも澄んだ赤色の髪と、挑発的な紅い眼差しの満。野性味を帯びたしなやかなボディラ
インで、均整の取れた肢体を魅惑的に彩っている。
冬のようにクールな青い髪と、性欲とは無縁そうな、修道女のごとき表情の薫。雪めいた白
い肢体はほっそりと美しく、その分、バストの高さが強調されている。
プロポーション的には人の好みもあり甲乙つけがたいが、少なくとも満は、薫のほうが上だと
思っていた。
「もしかして、わたしに笑われると思って、あんなに必死に声ガマンしてたの? もおっ、薫った
ら」
クチュクチュ…と薫の無垢な割れ目を浅くかき回しながら、満が声を立てて笑う。
「笑わないで……」
恥ずかしそうに白い裸身を『もじっ…』とくねらせて、薫の手が満の秘所へと伸びた。
お互いの腕が交差し、二つの視線が絡まりあう。
薫の指が、満の濡れた部分をそっとなぞり始める。満も指に愛液を絡めつつ、ゆっくりと薫の
秘所へ愛撫を返した。
「くだらない心配なんてしなくていいわ。わたしが知っている限り、あなたは世界で一番綺麗な
人よ。なのに、何を恥ずかしがる必要があるの?」
「……ありがとう、満。そう言ってくれて嬉しいけど……でも、やっぱり ――」
「大丈夫よ、こわがらないで、薫。あなたの感じてる声や姿は絶対に滑稽なんかじゃない。きっ
と最高に色っぽいわよ」
満の紅い視線を、薫の蒼い瞳が真っ直ぐに受けとめる。
「見せてくれるわよね? 薫の感じてる姿……」
股間をむさぼる満の指使いがいやらしさを増した。
「うっ……」
薫がビクッと身をすくめた。まるで、怯えた子供のように。いったん瞑った両目を開いて、こわ
ごわと満の顔を見る。
満が軽く頷き返して、優しく微笑んだ。
満の指先が、包皮の上からクリトリスに触れる。薫の様子を窺いながら、くにくにと指先でマッ
サージするように転がしていく。
「ふぁぁ……」
薫が眉尻を下げて、溜め息をつくみたいに細い喘ぎ声を洩らした。
(ふふっ)
満が心の中で笑う。こんに可愛い薫の姿を見たのは初めてだ。満の秘所に差し込まれた手
の動きも、すっかりおざなりになってしまっている。
満がもう一方の手で薫のカラダを抱き寄せると、何の抵抗も無く、くたり…と力なく寄り掛かっ
てきた。普段は満よりも体温が若干低めな彼女のカラダも、今は火照って感じられる。
「気持ちいいのね、薫」
耳元に口を寄せてそうささやくと、薫はコクンと首を縦に振った。その素直さに免じて、耳たぶ
を『はむっ』と甘噛みしてやる。
「あ…ぁあ…満ぅ」
薫の背が小さく弓反りになった。
(もっと気持ちよくなって……もっと声聞かせて……)
いつも薫がしてくれているみたいに、舌先で耳の輪郭をつつーっとなぞっていく。ビクッ!と薫
が背筋を震わせ、反射的に首を反らそうとしとしたのを、素早く手で押さえ込んで阻止する。
(だーめ。逃がしてあげない)
満は、薫の悶える反応を愉しみながら、舌先をチロチロチロ…と踊らせつつ何往復もさせ
た。
「ひっ、いや…あぁぁああああっ」
くすぐったさか、それとも気持ちよさか、どちらに耐えられなくなったのかは分からないが、薫
が首を縮こまらせて、泣き声のような悲鳴を上げた。
満が、少しイジワルに口元をゆがませた。
(そんなに気持ちいのなら、もっと念入りに可愛がってあげないと。……それから、こっちも、
ね)
首を激しく振って逃れようとする薫の頭を押さえつけ、耳の内側にまで舌を伸ばし、執拗に舐
め回して唾液まみれにする。そして、妖しい身悶えを繰り返す下半身のほうもまた、愛液が飛
び跳ねるほど激しく責め立ててやる。
すぼめられた舌先が、今度は耳の穴をほじくろうとうごめき出す。
「はぁぁ……あっ、アッ! だめ……ンッ、お願い…だから……もう…ゆるし……」
責め続けられる耳から、唾液の滴が、ぽた、ぽた、ぽた、と薫の肩へ落ちていった。
薫の理性が、満の舌の動きに溶け崩されていく。
「やめて…もう……あっ、やめ、だめ……だめ……あああぁぁ」
頭がおかしくなりそうだった。愛液でべちゃべちゃに濡れそぼった膣の奥で、劣情の疼きが沸
き立っていく。耐えられない。狂う。
ゾク…ゾクッ…ゾクッ……。
背筋を伝い落ちる甘美で、爛れた悦楽の感触。背骨に沿って、冷たい蚯蚓(みみず)を何匹
も這わされているような卑猥さに酔いしれる。
(あああぁぁ……もうだめ……ガマンできない……おかしくなる……)
薫がソファーの上でなまめかしく腰を振り動かし始めた。秘所をむさぼる満の指へ、いやらし
くおねだりをするみたいに。
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