2006−2007・1月までの日記っぽいもの

2006年02月14日

「や…やばい…」
 ぱんぱんに膨らんだカバンを抱えながら、なぎさが冷や汗を垂らして呟く。
 今日はバレンタインデー。カバンの中にぎっしりと詰まった大量のチョコは、なぎさを慕う女子たちからの愛の告白である。ちなみに全て本命。義理チョコは無い。
 ほのかの嫉妬を誘いそうなので、証拠隠滅にと思い随分と食べたが、全部は食べ切れなかった。
(結局、こんなに残っちゃったけどどうしよう?)
 想いの込められたチョコを捨てるなどという選択肢は、なぎさの中には存在しない。
(……よーし、家に着くまでに食べちゃお! 大丈夫、だってアタシ、チョコ大好きなんだもん!)
 ……もぐもぐ…………むしゃむしゃ……
 ……もぐもぐ…………むしゃむしゃ……。
 ……もぐもぐ…………むしゃむしゃ……。
 ……もぐもぐ…………むしゃむしゃ……。
(う…ぷっ、さすがに吐き気が……もう食べるの嫌……)
 ファイトだなぎさ!と自分自身にエールを送る。残ったチョコは、あと一枚。
 しかし……、
「あー、咲っ、ほら、いたわよ! 先代プリキュアの美墨なぎさ先輩!」
「なぎさセンパーイ! あたしたちのチョコを貰ってほしいナリ〜!」
「ひーっ! チョコはもう勘弁してぇーーーっ!」
 
 ようやく家に辿り着いたなぎさの姿を見て、出迎えたほのかが驚く。
「どうしたの!? なぎさ、顔面蒼白よ!」
「う…ううんっ、何でもないっ。ちょっと慌てて帰ってきたから」
 苦しげな笑顔で誤魔化すなぎさ。正確には、チョコを差し出してきた後輩から逃げ帰ってきた…である。
そうとは知らないほのかは、「もしかして……慌てて帰ってくるほど楽しみにしててくれたの?」とちょっと嬉しげな笑顔。
「へっ?」
「だって、ほら…今日はバレンタインデーじゃない。だから、なぎさのためにチョコケーキを作ってみたの」
 テーブルの上には、ほのかが丸一日、腕によりをかけた巨大なチョコケーキが……。
 なぎさの本日最後の闘いが幕を開ける。

2006年02月12日

●日曜AM7:30 藤田家にて。
テレビの前で包丁を二本持って身構える九条ひかり。
(頑張って、魁さん! たとえ相手が絶対蛸ン・マでも、あなたがアカネさんから伝授された蛸殺しの究極奥義・笛威樽無礼怒(フェイタルブレイド)をもってすれば、きっと倒す事ができます!
私も今日こそ笛威樽無礼怒(フェイタルブレイド)を会得して、そして、いつかタコカフェのメニューに絶対蛸ン・マを使った料理を並べてみせますっ!)

●日曜AM9:50 雪城家にて。
「なぎさっ、なぎさぁっ……」
「ほのか……? おはよう、今何時だっけ……って9時10分ッ!? やだっ、なんでもっと早く起こしてくれないのよ! プリキュア見過ごしちゃったじゃない!」
「ごめんなさい。私、ザオラルしか覚えてなくて……。大体は二分の一の確立で生き返るはずなんだけど……今日は調子が悪くって何回も何回も続けて失敗しちゃって」
「アタシ死んでたッ!? ていうかドラクエッ!?」

なぎさの死因:腹上死

「なぎさ、私もっと勉強してザオリク使えるようになるね」
「それよりもセックスする時は、作戦を『ガンガンイこうぜ』から『いのちだいじに』に変更したほうがいいんじゃない?」

というわけで、
録画しておいた「ふたりはプリキュアS☆S」第2話『パンパカ歓迎会は嵐の予感!』を見る二人。

(オープニング)
「スパスパスパークS☆P(スープパスタ)♪ レンジでチン!してプ・リ・キュアー♪」
「なぎさ、何その歌……」
「ぐーぐーお腹がS☆M(すき ましたー)♪ 朝から食べすぎノーノープロブレムっ♪ ……ほのか、昨日のスープパスタ……」
「分かったわ。温めて持ってきてあげる」

(Aパート)
スープパスタを食べながら鑑賞するなぎさ。
「今回の敵のボスって、アクダイカーンっていうんだね」(むしゃむしゃ…)
「悪代官……。私たちが闘った邪悪王に比べて、位がすごく低くなってる」
「それよりも、ほのか」
「うん?」
「カレハーンって聞いてたら、カレーチャーハン食べたくなってきちゃった」
「…………。じゃあ、お昼ゴハンはそれにしましょ」

Aパートの一番の萌え所は、やっぱこの部分でしょう(↓)
学校から帰ってきた咲が『お母さん、おやつーっ』と家に飛び込んで、
『うおー、焼き立てチョココロネ』(by日向咲)
『うおー、やきたてチョココロネ』(by日向みのり)

目を輝かせる日向姉妹。そしてもう一人、目を輝かせる…………

「うおぉぉぉぉーっ! 焼き立てチョココロネぇぇぇぇぇッ!」(by美墨なぎさ)
「…………。じゃあ、三時のおやつはそれにしましょ」(by雪城ほのか)

(Bパート)
テレビの前のなぎさ・ほのかに最大級の衝撃が走る!
『咲でいいよ。……私も、舞って呼んでいい?』

「この子たち……ッ!!」
「そんなッ!! 私たち百合の園最強の二人でさえ名字じゃなく名前で呼び合う仲になるまでに8話もかかったというのにッ!!」
「たった2話でここまで来ちゃうなんて、ありえない……」
「この二人、やっぱり只者じゃない!」


さて、カレっち(←この呼び方は本人希望)襲来。
咲と舞は、プリキュアに変身する。

『花開けっ、大地に!』
『はばたけっ、空に!』
「押し倒せっ、ベッドに!」
「なぎさっ、恥ずかしいから変な決めゼリフで張り合わないで!」

『輝く金の花・キュアブルーム』
『煌めく銀の翼・キュアイーグレット』
「悦ぶプラチナの百合・キュアホワイト」
「ちょっと、ほのかだって……」

「『『さんにんはプリキュア!!!』』」

「え…えーっ!? アタシだけ置いてきぼり!?」

『聖なる泉を汚す者よ!』
『あこぎな真似は、おやめなさい!』
「……ミポっ」

「…………。」
「…………。」
「ほのか、ミポって……何」
「とっさに何もセリフが思いつかなかったのよっ! ……悪いッ!?」
「い、いや悪くはないんだけど……」
「そう思ってるんだったら、今すぐ私を抱いてッ!」
「急に何ッ!?」

ありがちな展開で、なぎさはほのかを抱くこと。しかし、なぎさのポジションは総受け。抱くよりも抱かれる側の人間である。当然、女性を抱くテクニックに関しては、ほのかの足元にも及ばない。

「だめ、ほのかみたいに上手くは出来ない……」
「意識を手に集中するラ…するのよ」
「ええっ、何で? …っていうか、今、思わず『ラピ』って言いそうになってなかった?」
「いいから早くっ!」
「えっ、こ…こう?」
なぎさの手に百合の精霊の力が宿り、指使いがパワーアップ。たちまち、ほのかの全身を淫らな歓喜が走り抜けた!
「あああぁぁぁぁーッッッ、なぎさぁぁぁぁッ!!!」
さらに、「今度は足に意識を集中するの」とほのかの指示に、なぎさが足に力を込める。
なぎさの足に百合の精霊の力が宿り、足の臭いがパワーアップ。たちまち、ほのかの全身を淫らな歓喜が走り抜けた! 
「あああぁぁぁぁーッッッ、なぎさぁぁぁぁッ!!!」

二人がそんなことをやっている内に、新プリキュアはウザイナーを倒し、そして……。
『大丈夫よ。何があっても、二人一緒ならきっと大丈夫。そんな気がする』
舞が右手を差し出しながら、
『これからよろしくね、咲』
咲が笑顔でその手を握り返した。
『こちらこそよろしく、舞』

(爽やかに第2話・終)

2006年02月11日

なんつーか、毎度来て下さってくれている方々。本当に申し訳ありません。とにかくゴメンナサイ。
メインとなるSSの更新も遅く、毎週のプリキュアの感想のいい加減な調子で…。
つか、あれを感想と呼ぶのは甚だ疑問ではありますよ。自分的に。
実は、落ち着いたらリンクのページも作ろうと思っているのですが……
落ち着いたヒマを見つけるとゲームやったり小説読んだりと。毎回、ああっ…! とか心の中で叫びながら後悔してます。後悔したところで、このぐーたらな性根は変わりようがない気もしますが。


●見てきた映画の感想
『サイレン』
あ、うん……そーゆーオチなんですか……。
日常の背後に薄影のように這い寄ってくる不気味な雰囲気は、よく映像に出せてたと思います。
この映画の元になった『SIREN』というゲームも中古で買ってプレイしたことあるんですが。
なんか知らんが、いきなり拳銃持った駐在さんに追い回されて大変でした。
とりあえず、懐中電灯で殴りつけようとして、駐在さんの前に立ってボタン連打。あれ、殴れない?
駐在さんに撃たれて死亡。

……頭を使うんだッ!
駐在さんの背後に回りこむ。よしッ! 隙だらけだぜッ! 懐中電灯で殴りつけようとしてボタン連打。やっぱ殴れない。
振り返った駐在さんに撃たれて死亡。

しゃがめるみたいなので、その姿勢で車の陰に隠れて駐在さんが近づいてくるのを待つ。スライディングとか足払いとかいうコマンドはないのか? そうか、ないのか。駐在さんにゼロ距離射撃されてそれに気付く。

……もっと頭を使うんだッ!
懐中電灯を消して待機。ヤツが近づいてきたところでイキナリに点灯して目眩まし。隙を突いて、拳銃を奪おうとしたが……んなコマンド無いのかっ? そうか、ないのか。駐在さんに(以下略)

……Don't think. FEEL!(考えるな、感じろ!)
駐在さん発見! 即座に隠しコマンド「上上下下左右左右BA」入力。真っ正面から突撃開始。
今こそ奇跡を我が手にッ! 懐中電灯・ライトセイバーモード起動! 死ねやゴラァァァァァァッ!

…やけくそになったところで勝てるもんじゃないのね。えーっと、これで死ぬの何回目だっけ?

しゃーないのでネットで調べてみると、そもそも懐中電灯では殴れないそうです。
危険が差し迫った状態でわがままなこと言ってんじゃねーやと思った。
ちなみに、この場面のクリアの仕方は、なんかプレハブの小屋の中に車のキーがあるので、それで車動かして駐在さん撥ね殺せや、との事。
えーっと、まずプレハブ小屋の中に入って、車の鍵鍵鍵…と、あった。
んじゃあ、駐在さん殺しに行くか……と、勢いよく戸をガラガラと引き開けると、目の前に駐在さんが拳銃構えて……。
この場面、本当にゾッ…としました。怖気ついて、ゲーム続ける気が一気に萎えてしまいました。
というわけで、とっととこのゲームは売っ払いました。めでたし。


『PROMISE -アイシールド21-』
序盤の、派手な華鎧を着込んだ真田広之の殺陣が最高でした。
ボーラ(?)を振り回しながらの華々しく、非常に男映えする立ち回りに、瞬きするのも惜しみつつ目を奪われてました。
だが、その後は、女ボケしたおっさんになってしまうのが悲しいぞな。
それよりも、この映画はニコラス・ツェー演じる北のイケメン公爵・無歓に注目すべきだ。
マッハで走り回る相手と互角に戦える戦闘能力。冷酷に研ぎ澄まされた非情な心。
そして、ラスト付近で明かされる彼が悪の道を志した動機とは……

……んな小さいことで!?(心の中で大爆笑)

この小ささの何といとおしい事か。コイツ、本当に最高やと思いました。

2006年02月05日

●プリキュアS☆S
第1話『おっどろきの再会! ふたりは何者なの!?』

「ほのか、今何時?……って、 ゲッ、8時27分!? S☆Sの放送まであと3分しかないッ!」
「なぎさ、ペースを上げましょ! ……あんあんあんあんあんッ! あーっ、赤ちゃん出来ちゃう!」
「絶頂ナリ〜っ! ……ふぅ、放送開始に間に合った〜」
「このまま抱き合いながら全裸視聴しちゃいましょ」

(ふたりはプリキュアS☆S オープニング)

「わっ、なんか新しいブラックの衣装って可愛いっ」
「ブラックじゃなくてブルームよ、なぎさ」

「この二人って、どんな感じなのかなぁ」
「えーっと……確か日向咲さんは、けっこう積極的に求めてくるタイプね。最初の頃はガチガチに緊張してたけど、最近ではリラックスしてカラダを任せてくれるわね。それに対して、美翔舞さんは羞恥心が強いタイプなの。感じてるところを見られたくなくて、必至で耐えてる様子がすっごく可愛いのよ」
「ちょっとほのかっ!?」
「ち…違うのよっ!? 浮気で抱いたんじゃなくて、その、あ…あくまで長期間にわたる調査を二人のカラダに対して学術的に行っただけだから……」
「……ほのか、かなり言い訳苦しい」

(Aパート)

8:34 なぎさがほのかのお尻をさわさわと撫でる。
8:35 ほのか、テレビを見ようとするなぎさに強引にキス。
8:36 なぎさがほのかの胸を優しくいじりだす。
8:37 お返しとばかりに、ほのかの手がなぎさの秘所へと差し込まれ……。
8:38 「ほのか…、あんっ……気持ちいい……」 なぎさ、総受け全開モード。

……………………。

「そ、そうだっ、テレビ! ほのか、セックスしてる場合じゃないよ! えっ、今どうなってるの!?」
「えっと…二人が失われた記憶を取り戻したみたい」


『あたしたち、前にどこかであってるよね』
『やっぱり……! そうだよね』
『どこで会ったっけ…?』
『もう少しで思い出せそうなんだけど……』

『まだチョピ? まだ思い出せないチョピ?』
『んんんん〜〜っ、じれったいラピ! ……思い出すラピ! 5年前ラピ!』

<回想シーン・5年前>
世界の滅びを前に、変身した二人が叫ぶ。
『いろんなことがあったんだもん!』
『でも、乗り越えてきたのよっ!』
<回想シーン終わり>

『あの時のジャアクキングは……』
『あなたたちだったのっ!』


「……って、んなわけあるかぁぁぁぁぁぁッ!!!」
「なぎさっ、落ち着いて!」


(Bパート)

敵、来襲。
咲と舞を守るために、光弾に姿を変え、特攻するフラッピとチョッピ。
「あーあ、メップルとミップルにも、このくらいの根性があったらねぇ」
「何言ってるのよ、なぎさ。ミップルたちにあんな危険なことさせるなんて出来ないわ。……あ、日向さんと美翔さんが変身した」
「あははは、ほのか、見て。この反応、アタシたちが初めて変身した時とそっくり!」

…………。

「新プリキュアの必殺技って、最後は二人がそれぞれ両手で撃っちゃうんだ」
「やっぱり私となぎさがマーブルスクリュー撃つときみたいに、最後まで手は繋いでいてほしかったわね。プリキュアの力の源って、ほら、二人の絆の強さなワケだもの……」
「そうよ、プリキュアの手は繋がってるべきよね。こんな風に……って何これ」(ジャラ…)

ふと手首に冷たい違和感を感じて、なぎさがそちらに目を向ける。自分の左手とほのかの右手は、硬い鋼の絆で結ばれていた。

「あっ、ほのかったら、いつの間に手錠なんか! ありえないッ!」

ちなみに手錠の鍵は、ほのかがとっくに処分済み…でしたとさ。



あー…S☆Sのエンディング、
評価するならば、神。としか言いようが無いですね。
五條まゆたんの歌声の走りっぷりが、すごく気持ちいいです。うなぎの蒲焼を奢ってあげたい。

2006年01月29日

前回、PMS・MAXスパークの光の瀑布に身を灼かれながらも、プリキュアのパワーを飛躍的に増幅させるスパークルブレスを破壊して闇へと帰ったサーキュラス、ウラガノス、ビブリス。
切り札であるブレスを失ったプリキュアの前に立ち塞がるのは、四戦士最強の男・バルデス。

そして……………………

●プリキュアMH
第47話(最終話)『扉を開けて! ここから始まる物語』

(アバンタイトル)
ほのかの脳裏に走る走馬灯の光景……。幼い頃の父母との別れ、優しく慰めてくれる祖母。

それは、バルデスとのあまりにも圧倒的な力の差の前に、はかなく消えていく希望の光。



(Aパート・ファイナルバトル)
瓦礫の上で力尽きて倒れるブラックとホワイト。二人の瞳に映るのは、無残な絶望の色。
「指ぐらいなら…動かせるかな……ダメだ……」
「無理しなくていいよ……」
「今のがトドメって感じ……? アタシたちじゃ、どうしようもないって事……?」

天は砕かれ、大地は死に絶え……。
明日を失い……未来を失い……。
ジャアクキングが世界を喰い尽くしていくのを、ただ悔しがって傍観するしかない二人。
終焉が侵攻を続ける。それがブラックとホワイトを呑み込む前に、それぞれのパートナーであるメップルとミップルが感謝の言葉で別れを告げる。
「メップルはブラックと出会えて、本当に幸せだったメポ」
「ミップルも幸せミポ。世界の終わりがきても、ホワイトと一緒にいられるミポ」
「だからもう泣くなメポ。涙はブラックには似合わないメポ」

「ありがとう、メップル」
「ありがとう、ミップル」
「ボクたちは一緒だメポ」
「ずいっとずっと一緒ミポ」
そして、瓦礫の崩壊に呑み込まれて、果てなく落ちていくプリキュア。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

虹の境界にて、クイーンへの道を探すルミナス。
「みんなを愛しているから、クイーンになろうと決めました」
『でも、みんなを愛しているからクイーンになれない』
「私はどうすれば……?」

未来を導く光の王子・ポルン、未来を紡ぐ光の王女・ルルン、
そして光の命シャイニールミナス、12のハーティエル……。
全ては揃っているはずなのに、なおも道は見えず……。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

絶望に沈む二人の目の前にあるのは、幼き頃の自分の姿。そして、そのそばには、くじけた時、辛かった時、励ましてくれた温かい家族の姿。
「だから、もう泣くなって。上手くいかなかった事を素直に受け止めるってことも、勇気だぞ。なぎさ」
「そうよ、なぎさ」
「お父さん……お母さん……」

「明日はきっといい日になりますよ。ねっ、ほのか」
「おばあちゃま……」

世界はもう一度希望を託す。二人の腕に。
スパークルブレス、再装填完了。

戦う決意を瞳に宿し、再びバルデスの前に立ち塞がるプリキュア。
「アタシたちには、まだ明日がある」
「だから、諦めるワケにはいかないの」

「ならば教えてやろう。お前たちに明日など…無い!」
しかし、バルデスを迎え撃つのは、二心一体の極致にあるプリキュアの猛撃。拳と蹴りによるコンビネーション弾幕で反撃を許さない。
「アンタは勘違いしているっ! アンタが相手にしているのは、アタシたち二人だけじゃないっ!」
「あなたは全ての命を相手にしているのっ! 私たちに繋がる全ての命をっ…!」

「その命共々……消えてなくなれぇぇっ!」
バルデスが全力で放ったエネルギー弾。全てを喰い尽くす力を凝縮した小さなブラックホール。
それをブラックが叩き伏せ、ホワイトが蹴り裂く。
そして、バルデスが態勢を立て直す暇を与えず、一気にプリキュア最強の一撃、PMS・MAXスパーク!!
MAXパワー最大出力放射。その余波で、バルデスの周囲を光の爆轟が荒れ狂う。
しかし、その光の瀑布でさえもバルデスの体を覆う闇の衣を灼き払っただけに過ぎなかった。
それは、もはや闇の戦士のレベルで語れるものではない。

その存在は……既に、とうの昔にバルデスではなかった。
肉体の管理を任せていたバルデスという意識体は闇へと還った。
今、二人の前に立ちはだかっているのは、

――ジャアクキング

闇の帝王がプリキュアへと告げる。
「お前たちこそ、宇宙そのものを相手にしているのだ」



(Bパート・ラストバトル)
幾重もの真空の刃が二人を撃つ。さらに、滞空状態から叩きつける見えざる力の鉄槌が、プリキュアを中心に大地へクレーターを穿つ。
その圧倒的な力の行使でさえ余興。
「よく耐えたな。誉めてやる」
二人は一瞬で理解する。その絶対的な『存在』との差を。
ジャアクキングが余力を残して放つ力の波動に、近づくことすら出来ずに吹き飛ばされるプリキュア。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「勇気、希望、未来……」
一歩ずつ階段を上るように、クイーンの心が提示したファクターをなぞっていくルミナス。
そして、
「…分かりかけてきたっ」
チェアレクトから一筋の光が伸びる。クイーンの復活は間に合うのかっ!?

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

破戒の意志を手に乗せるだけで、大地は砕かれ、引き裂かれる。
咆哮は星さえも揺るがす。
ジャアクキング、それは真なる絶望のカタチ。その存在がある以上、全てはただ闇に食い尽くされるのみ。どれほどあらがったとしても、変えることの出来ない無情な真理。
絶望に心を打ち砕かれ、半ば放心状態のプリキュア。
ケヤキの木の下で、膝を抱えてうずくまるブラックが呟いた。
「しまった。宿題忘れた……。卒業文集、まだ出してない……」
こんな時に…と呆れながらも、ホワイトが続く。
「そういえば、私もおばあちゃまにあさり買ってきてって頼まれてた……。どうしよう、お味噌汁の具……」

「いいなぁ、あさりのお味噌汁……」
「ウチで一緒に食べましょ」
(プロポーズのセリフの一つとして、『君の味噌汁が飲みたい』なんてのがありますが、ブラックのセリフは暗にこれを言っているようにしか聞こえない。そして、ホワイトのセリフ『ウチで一緒に…』は雪城家に嫁入りしてくれと言っているようなもの。スタッフは絶対確信犯だ)

ブラックのペースに皆が乗せられ、空気が変わる。胸に響いたのは、ほんの小さな希望。たった一粒の勇気。全てを喰い尽くす闇の力を前に、その一滴一滴の雫で何が出来るというのか?
ジャアクキングの存在=世界の消滅。それは揺るがない運命。だが……それがどうしたッッ!?
たとえ相手が絶対の真理そのものであろうとも、彼女たちの心の中にある自由は従えられない!

光の園にある全てを生み出す力の源、プリズムストーンが二人の気持ちに共鳴する。

二人がジャアクキングの前に進み出て名乗りを上げる。
「光の使者、キュアブラック!」
「光の使者、キュアホワイト!」
「「ふたりはプリキュア!!」」
そして、宣告する。
「闇の力の僕たちよ」
「とっととおウチに帰りなさいっ!」
再びジャアクキングの力の波動、多重真空刃。それでも、プリキュアは退かず。
「何っ!? 耐えたのかっ!?」
徐々に間合いを詰めててくる二人に、先ほどまでの余裕は無く、ジャアクキングは全力で力を振るう。
「なぜだ、なぜ倒れん? 私の力は、宇宙そのものだぞっ」
「ここで倒れるワケにはいかないのッ!」

「いろんなことがあったんだもん!」
「でも、乗り越えてきたのよっ!」

「だから、アンタなんかに……」「今、ここであなたなんかに……」

「「負けるワケにはいかないのーッ!」」
スパークルブレスが二人の想いに応えるかのように輝く。ブラックとホワイトの体に流れ込む光の奔流。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
「りゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
そして、絶対存在であるジャアクキングについに一撃を叩き込んだ。
「バカな……ッ!」
さらに空からの猛追。二人が灼熱と化して渾身の特攻を仕掛ける。

まるでジャアクキングの断末魔の如く、その衝撃に地球が鳴動した。

……だが、終わらない。光がある限り、闇は消えぬ。
怒りと屈辱に震えジャアクキングが復活する。
「な、なにアレっ……ありえないっ!」
二人が見上げたその先なるのは、あまりにも巨大なジャアクキングの姿。その強大な掌打でプリキュアを地球ごと砕こうとする。
しかし…………。
その手を掴み止めたのは、もうひとつの絶対存在であるクイーン。ジャアクキングの対極に位置し、共にあり続けるもの。
そして、ルミナスが導き出した答えのカタチ。
クイーンは言う。『ルミナスは永遠にあなたたちの心の中で生き続けるでしょう』と。
しかし、ルミナスの本心は……
「だから、決して後悔はしな…い…うっ…ぅっ…」
耐えきれず溢れ出した涙は、この虹の園のみんなと離れたくないと雄弁に語る。
「ひかり…」
「私たち繋がってる。永遠に……」
「はい…」

そして、漲る勇気と溢れる希望を光に乗せて、正真正銘最後の一撃であるエキストリーム・ルミナリオンMAXがジャアクキングを撃ち砕き、闇の勢力を押し返す。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

かくして、光と闇の調和は取り戻された。
しかし、極限まで疲弊したメップル以下光の園の住人は、次元を超えて虹の園でその体を存在維持させ続けることがかなわず、自分たちの世界へ戻ることとなる。
それは光の園と虹の園、二つの世界に分かたれた永遠の別れ。

なのに……。

なのに……。

皆を結び付ける絆は、あまりにも強く。
世界を超えた程度では引き裂けないほどに強く。


「こんなことになっちゃいました」
結局、そう言って苦笑するしかないひかり。
その日のタコカフェは随分と明るく騒がしく…………。

(END)




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