心に降る闇色の雨04


「ああっ…あぁぁ……ふぁああぁぁ……」
 またたびを与えられた猫みたく弛緩しきった表情で、ぼうっと法悦の境地に浸る。ぼんやり開
いたままの紅い瞳に映るのは、震え続ける薫の肩。
(はやく……薫……やさしくしてあげないと…………)
 そうは思っても、立て続けに快楽の波にさらわれたカラダが、全然言うことを聞いてくれない。
「何やってんのよっ…」と舌打ちと共に、自分の手足に向けて苛立ちをぶつける。
 床に伏した薫の白い裸身が震えている。自分よりもプライドの高い彼女のことだ。必死に嗚
咽をこらえているに違いない。
(はやく……だきしめてあげないと……)
 自由にならないカラダで焦る満の耳に、「あっ…ああッッ…」と小さく気を吐く声が届いた。そし
て、薫の全身 ―― 主に腰から下の部分がビクッ!ビクッ!と跳ねるみたいに痙攣するのが
見て取れた。
「……薫?」
 満の呼びかけに反応しない。いや、反応できないのか。
 立ち上がるだけの力が腰に戻らず、結局四つん這いの姿勢で満が、よたよたとおぼつかな
い手足を何とか動かして薫に近づく。
(……んっ)
 あまり力の入っていない右手で、薫の身体を仰向けに寝返らせた。満の位置からだと、薫は
頭をこちらにして、すらりとした長い脚を書架のほうに向けて投げ出している格好だ。
 逆さまの顔を上から覗き込んで、いつもは澄んだ湖のごとき綺麗な蒼を見せる瞳が、すっか
り快感の霧で煙っているのを確認する。
「ふ〜ん……そういうこと……」
 イジメられて泣き出したのかと思っていたら、全くの逆。……全身を甘く沸かせて悦んでい
た。しかも、侮蔑の言葉を受け続けている内に絶頂を迎えてしまったらしい。
 薫の瞳にゆっくりと理性の光が戻り始めるのを見つめながら、
「おはよう、変態さん」
 ニッコリと笑ってそう言ってやる。
「……殴っていい?」
 わりと本気で薫が言うも、満は「好きにすれば?」とあっさり流してしまう。殴られたってかまわ
ない。
 宝石みたいな蒼い瞳に、自分の顔が映っていた。幸せそうな表情をしている、と思った。
 心の奥底に秘めた覚悟が小さな棘(トゲ)となって、チクリと満の胸を刺す。その切ない痛み
が、二度と来ないであろうこの幸せな時間をとても愛おしく感じさせた。
 薫の白い腕がフワリ…と上がった。満の後頭部を掴んで、ぐいっと力任せに自分の顔へと引
き寄せた。
( ―― えっ?)
 満が、完全に不意を突かれた状態で、薫の唇を味わわされる。体温でふんわり温められた
アイスクリームみたいな、少し冷たい唇の感触と溶けるような軟らかさ。
 逆さまの向きで重ねあう唇…………二人にとってのファーストキス。
「ンンっ…」
 くぐもったうめきと共に、満が顔を上げようとする。しかし、薫がもう一方の腕を彼女の首裏に
絡めて阻止した。
 キスという拘束が解かれたのは、それからしばらく後。ほんのりと頬を紅潮させた薫を、満が
きつく睨みつける。微かに怒りの洩れている声が、薫の耳朶を静かに撫でる。
「……おどろいたわ。薫がこんなイタズラする子だったなんて」
「確かに。こういうのは、満の領分ね」
「まさか、冗談で相手のファーストキス奪うような魔女じゃないわよ」
「ふふっ、そうね。満は相手を思いやれる優しい心を持っている」
 淡々と褒め言葉を紡ぐ薫に調子を狂わされて、「もうどうでもいいわ」とぼやきつつ、満がよう
やく動くようになったカラダを起こして立ち上がる。
「シャワー浴びてくる」
 そう言い残して、まだ床に寝そべっている薫に背を向けた。だが、満がドアへ辿り着くよりも
早く、スラリとした裸身が弱々しい足取りで、けれども滑るようになめらかな動きで彼女を追い
越して、この書斎のたったひとつの出入り口を背中で塞いでしまった。
 満が左手を腰について、小さく溜め息をついてみせる。
「わたしを出したくないの? この部屋から」
「そう。出したくない。正確には、わたしの前からいなくならないでほしい」
「魅力的なわたしを一人占めしたくなったのね、薫ったら。さっきのキスもそのつもりで?」
 満の軽口に、薫が肯定の頷きを見せた。その理由でかまわない、という風に。
「薫、もしかして気付いているの?」
 薫の首は、ゆっくりと縦に振られた。
「……ふ〜ん、薫が自分からしたがるなんて変だと思ったけど……つまりは、色仕掛けで探り
を入れていたのね」
「まさか、そんな必要は無い。わたしには、あなたの気持ちが分かるもの。……何を考えている
かまでは読めないけど」
 満の尻肉を舐め癒している時に強く感じたのだ。とにかく今は、自分のカラダを使ってでも満
の傍から離れてはいけない、と。根拠という下敷きのない、直感だけの行動だった。
(まあ、すぐに愉しむ方向で夢中になってしまったけれど……)
 ドアに背をもたれかからせて、火照ったカラダを持て余している薫が、淡い自嘲の笑みを浮
かべた。
 満の優しい心 ―― 痛々しいまでに張り詰めて、折れて砕けてしまいそうな決意。彼女が胸
に秘めた想いを、今頃になってようやく嗅ぎ取ることが出来たというのが歯痒い。
「満……あなたのためなら、何だってしてあげられる。だから、あなたは絶対に馬鹿なことはし
ないで」
 白い右腕が、舞うような動きで前方に伸ばされた。『パチンッ!』と細い指をスナップさせて滅
びの力を飛ばし、書斎机の上に置いてあった週刊誌を一瞬で灰化させた。
「他人の獲物を奪うのは良くないわ、薫」
「優しい満に背負える罪じゃない」
「わたしが行うのは、罪ではなく罰だと思うけど?」
 冷静を装おうとしているが、昂ぶった怒りの感情が声ににじみ出ていた。紅い瞳には、暗い
光が湛えられている。ダークフォールで生み出された戦闘人形の胸奥が、氷よりも冷たく凍っ
た殺意に疼いていた。
 しかし……。
 蒼い眼差しが、ひた…と満の瞳に焦点を合わせた。静謐な視線圧力。透明無色にまで研ぎ
澄まされた意志を、霜が降りそうなくらい冷ややかな声音に乗せて吐く。
「わたしは、それを絶対に許さない」
 その一言で、胸奥に固く凍らせたはずの殺意が大きく揺らいでしまうのを満は感じた。
「か、薫には関係ないっ!」
 薫の視線に押し負けた顔をキッ…と背け、ムキになって叫ぶ。力を入れすぎた握り拳が無意
識の内にぶるぶると震えていた。満の殺意をたどって、握り締めた手の内に滅びの力が満ち
てくる。だが、感情的になりすぎていて、その破壊的な力を全く制御出来ていない。
(満……ッ!)
 薫の瞳に緊張が走った。満も一瞬遅れて気付いたが ―― その時にはもう手を握ってはいら
れない程の圧力が、拳を内側からこじ開けようとしていた。
 二人の背筋を戦慄が駆け抜けた。刹那 ―― 。
(―― 薫ッ!)
 満が薫の瞳へと視線を走らせた。二人の周囲の空気が緊張で引き締まる。
 満は迷うことなく手を開き、暴走状態にある滅びの力を捨て放った。
 薫が躊躇なく前方へダッシュをかける。体当たりの勢いで満の身体を抱き、そのまま飛ぶ。
 生を受けた瞬間から一緒だった二人だ。この辺の呼吸の合い具合は、見事の一言に尽き
る。
 暴発した力が衝撃波となって吹き荒れる直前、二つの裸身が書斎机を飛び越え、そのガッシ
リとした陰に転がり込んで身を守る。
『バンッ!』
 書斎のドアが至近距離からの衝撃波をモロに食らって吹き飛ぶ音。同時に、ソファーが盛大
にひっくり返る音も聞こえた。
「……なんだかアクション映画みたい」
 薫が妙に緊張感の無いセリフを呟く。満のほうは、さすがにバツの悪げな顔になって、
「ごめんなさい。部屋、壊しちゃった……」
 と、珍しくしおらしい声で謝った。
「いいわよ。悪気があってしたわけじゃないもの」
 薫は別段気にする様子も無く、自分のカラダの下に庇った満の無事を確認してから、軽く安
堵の溜め息をこぼした。
「で、少しはガス抜きになった?」
 満の両脚をまたいで、ひざ立ちの姿勢になった薫が、机の陰からひょっこりと顔を出した。部
屋の惨状を見渡して、なおも表情一つ変えることなく淡々と、
(いっそのこと、これを機に模様替えしてみようかしら)などと、心の中で呟いてみる。
「……片付けてくるわ」
 満が表情を重くして、薫の両脚の間から這って抜け出そうとする。もし先程の暴発で薫の身
に何かあったなら……そう想像すると、気分がさらに落ち込んでしまう。
(うっかり……じゃ済まないわね、まったく……本当に……)
 薫の無怪我に安堵、自分の馬鹿さ加減に嫌悪。思わずこぼした溜め息には、相反する二つ
の感情が複雑に入り混じっていた。
「待って、満」
 薫の指が、つっ…と満の足首に触れた。ひんやりとしたくすぐったさに、白い脚がピクン…と
震える。
「片付けなら、あとでいいでしょう?」
 クールな響きだが、芯に柔らかさを含んだ声音。自分の脚の間から抜け出した満の肢体を
追って、薫が雌獣のように両手と両ひざを床に着いた。そっと片手を伸ばして、満の太ももを撫
で上げた。
「ンっ…、薫?」
 カラダごと振り向いた満を、穏やかに澄んだ蒼い双眸が射抜く。一歩一歩、ゆっくりと床を這
い進んでくる薫は、清純な白い肌になまめかしい色気を這わせて、静かな迫力で満の動きを縫
い止めた。
「逃がさない」
 その薫の一言を、満は苦笑で受けとめた。
「わたしを逃がしたくないのは、薫の心? それともカラダ?」
「両方よ」
 心も肉体も満を求めていた。激しくはない、むしろ静かに全身を火照らす情欲の炎は、薫の
理性を「愛しさ」で侵す。
「事件のことは忘れて。今からわたしがあなたの『檻』になる」
 薫の両手と両ひざは、満の脚という領域をまたぎながら、緩やかな進軍を止める気配は無
い。
「今日一日、この肉体(カラダ)があなたを閉じ込めて、どこにも行かせない」
 太ももを、ひやっとした感触がなぞってきた。唾液のシロップで濡れた、たわわな乳脂肪の果
実。張りのある瑞々しい皮膚の内側に、たっぷり詰まった軟らかさ。
 満のカラダの上をゆっくり這い進みながら、薫が訊ねる。
「……それでいい?」
「いいわ」
 満が喘ぐように即答。冷めていた情欲の昂りが、再び肉体に戻ってくる。
「ふふっ…」
 薫が白い裸身を蛇のようにくねらせて、満のカラダの上を這った。
 たっぷりと唾液をなじませた乳房は、軟肉のスタンプ。体重をかけて『むにゅぅ』と押し潰し、
満の白い肌へ唾液を浸透させる。
「あぁ……あぁぁん」
 満の背に、ゾクゾクと悦びが走った。
(もっと……もっと ―― )
 溶けるみたいに軟らかな肉塊が、満のカラダに何度も押し付けられた。
 お腹に、可愛らしいヘソに ―― そして、満の小ぶりな乳房にも ―― 。
「それなりには感じてくれてるみたいね」
 喘ぎを絶やさない満に、薫が微笑みかけた。
 お互いの乳房を突き合わせる位置で、薫がゆっくり力を抜いて、下にいる満のカラダにしな
だれかかる。
 満の胸の果実はまだ生育途中のためやや固く、その内側いっぱいに詰まった弾力に負け、
薫の乳房が軟らかに形を崩した。
「次は……こういうのでどう?」
 薫が上体を左右にくねらせた。動きに合わせて、二つの乳房が軟らかに潰れたまま、満の胸
を舐めるように滑って往復した。
「あぁッ…あッ!」
 ねっとりとした唾液の感触が、満の乳房をいやらしく舐めまわした。舌よりも軟らかな感触
に、満の背中が微かに弓反った。
「ふぅん……そんなに気持ちいいの? じゃあ……」
 薫が片方ずつひざを床に立て、満の上半身をまたぐ姿勢をとった。
 ぽたり……。
 薫の細腰から、涎が垂れ落ちた。
「もっと上質のシロップを使いましょう。こっちのほうが滑りがいいわ」
 口調と表情は淡々としているが、ひざ立ちの下半身は微かに震えを見せていた。しどけなく
濡れた秘所を間近に晒す羞恥と興奮。心臓の鼓動が、熱く、早鐘を打ち始める。
(あッ……)
 薫の腰が、がくがくっ…と砕けそうになる。実を言えば、顔から火が出そうなほど恥ずかしい。
 でも。
 満のためなら、どんなに恥でも喜んで晒そう。変態女と蔑まれてもかまわない。
 愛液の湿りをたっぷり吸った陰毛が、恥丘にべったりと張り付いている。それよりも下に位置
する淫部はさらにぐしょぐしょ。こびりついた粘液が、無垢な性器をひどく卑猥なモノに見せてい
た。
 薫が両手の指で、秘貝の口を左右からくいっと引っ張った。内側の、綺麗なサーモンピンク
の粘膜が覗く。同時に、満の鼻を濃い媚臭が突いた。
「……見える?」
 羞恥心を押し殺した薫の低い声。
 そっとうなずく満の目の前で、薫の股間から涎が数滴こぼれ落ちた。
 唾液よりも粘っこく、満の白い肌にへばりつく。
「あんっ…」
 満の甘い喘ぎ声。ぽたり、ぽたりと肌に落ちてくる滴は、薫の膣内で沸く興奮の火照りをその
まま帯びていた。
(熱いっ……)
 心の中で、悦びの声をこぼす。
「薫の……変態……」
 微笑みながら悪態をつく満を見て、薫の口元を笑みがかすめた。
「そのとおりよ。変態なわたしは…………嫌い?」
「ううん。大好き」
 満が目を細めてそう答える。手を下から伸ばし、薫の秘所を撫で上げた。
「シロップ搾り出すの、手伝ってあげる」
 人差し指が、包皮の上からクリトリスを優しく押さえて、小さく円を描くみたいに転がす。
「あぁ……んっ……あああっ」
 薫が大陰唇を指で広げたまま、浮かせた腰をもぞもぞと悶えさせた。満の指の動きに合わせ
て、白磁の裸身が悩ましくわなないた。
「あんっ……いっぱい垂れてきたぁ。ねぇ、もっとぉ……」
 両胸の浅い谷間へ、とろり…と熱いシロップが糸を引きながら垂れ落ちていく。それを見て、
満が嬉しそうに声を上げた。クリトリスをいじる手を止め、もう一方の手も薫の秘所へと伸ばし
た。
「あぅっ…」
 薫が息を呑んだ。粘膜に直接触れてくる指の感触。粘膜部分を露わに剥いた両手の内側
で、人差し指が膣口をゆっくりなぞっている。
「ふふっ。この穴の中に結構たまってるんじゃない?」
 捕まえた獲物を嬲るように撫でまわす指の動きは、すぐに二本に増えた。
「ダ…ダメよ、満……やめて」
 無駄と知りつつも、薫が言う。
「や・め・な・い♪」
 楽しげに答える満が、二本の人差し指を鉤(カギ)のごとく引っ掛け、膣口を左右に引っ張り
広げた。ぐにぃっ、と広がった膣穴の内部を、満の両目がまじまじと覗き込んで、「へぇ…」と声
を洩らした。
「 ―――― ッッ!!」
 薫がバッと口元を手で覆って、横を向いた。あまりの恥ずかしさに眩暈がして、一瞬、吐きそ
うになった。
 しかし……。
 満の赤い髪をちらりと視界の端に収めると、すぐに胸が軽くなっていった。苦しげに顰められ
た眉も、元の落ち着きを取り戻した。
 発情状態のままずっと分泌液を漏らし続け、奥までベトベトにべたついた性器。自分でもマト
モに見られないほど恥ずかしい。
 それでも……。
 ゾクゾク ―― ッと妖しい悦びが背筋を舐め上げる。
 満が見たいというのならば、どこだって見せてあげられる。……いや、むしろ ―― 見てもら
いたい。
 口元を覆った手を下ろして、薫が訊ねた。
「わたしの中って……どんな感じ?」
「んー…、薫のカラダとは思えないくらいイヤラシイ。お肉がてらてらぬめってて……すごく卑
猥。それに、臭いも……」
 満がすんすんと鼻を動かす。
「くさい…でしょ?」
「ううん。…っていうか、よくわからない。確かにいい匂いじゃないけど、嗅いでるとなんだか興
奮してくる」
 ちょっと褒められた気分。きっと自分も、今と逆の立場だったら同じ感想を持つだろう。
 薫が軽く腰を引いて、満の手から逃れる。もっと覗いていたかったのか、満は不満げな顔つ
きになった。
 薫は彼女の睨むみたいな視線を、大人びた笑いでかわした。
「ふふふっ、……あとでね」
 そう。たっぷりと、好きなだけ。
「これだけ濡れれば十分ね」
 満の胸の谷間に這わせた指が、『ぴちゃ』と自分の愛液をすくった。
「気持ちいいことの続き……してあげるわ」
 興奮が滲んで、やや上擦った声。甘い痺れに沸き上がる膣のせいで、小刻みな震えの止ま
らない腰は、今にも満のカラダの上に崩れてしまいそうだった。薫は慎重に、ひざ立ちの姿勢
のまま足を動かして後退した。
「大丈夫?」
 満が両手を持ち上げて、薫の左右の手に平にそっと重ねた。
「だ…大丈夫……」
 それを支えにして、薫が片方ずつひざを倒していった。
 ゆっくりと下半身が重なり、二人の胸先が軽く触れ合う。
「―― くぅッ」
 満が両目をギュッと瞑って、気持ちよさに顔をゆがめる。
 ツンっと硬くした乳首は、まるでガラス細工のように脆かった。微かに触れ合ったくらいの衝
撃で、理性にヒビが入りそうな程の快感を全身に反響させる。
「ふぁぁ……」
 ジンっ…ジンっ…と熱っぽい情欲が肉体に鳴り響く。満が口を半開きにして酔いしれた。 
「ンッ…」
 薫が、汗ばんだ乳房をそろりそろりと満の胸に預けていく。キメ細やかな雪白の皮膚に包ま
れた軟らかな重みが、満の乳房の上でゆったりと潰れる。
 唾液と愛液、二つの淫水で濡らされた肌の感触に、薫と満が同時に喘いだ。
「満……動くよ?」
「うんっ…」
 乳房を密着させた状態で、再び薫が上半身をくねらせた。自らの愛液の匂いに興奮を覚えた
のか、さっきよりも動き方がなまめかしい。
「アッ……」
 唾液と愛液の混合潤滑油によって、乳房が予想以上になめらかな滑りを見せた。舌以上に
しっとりと濡れた感触が、『にゅるんっ…』とすっぽ抜けるみたいに、満の乳房を右から左へと
舐めていった。
「あぁんんっっ」
 満が甘ったるく嬌声を上げた。
 唾液と愛液でツヤ出しされ、淫猥さを強調された乳房が、今度は左から右へと滑っていった。
たっぷりと用意された淫水の効果で、石鹸のヌメリ以上に滑りがいい。
「ああんっ……薫、わたしの胸がぁ……」
 涎まみれの胸先で、感じ過ぎて『キュンっ』となった薄い桜色の突起が、優しく舐め転がされ
た余韻に切なくうずいた。
 指でも舌でも味わえない、乳房による舐めまわしの愛撫。満の小ぶり乳房に密着しながら、
右から左へ、左から右へと、搗き立ての餅のように軟らかな乳肉が往復を続ける。
「だめ……」
 力の無いつぶやきが、満の口からこぼれた。
「だめ……これ以上されたら、わたしのおっぱい……溶けちゃう……」
「……溶けちゃうぐらい……気持ちいいの?」
「はぁんっっ……バターみたいに……溶けちゃうぅッ……」
 薫のカラダの下で、満がじたばたと裸身をよじらせた。
「こら、おとなしくしてないとやめるわよ?」
 満の左耳に顔を寄せて、その耳たぶを軽く甘噛みしてやる。「ひぃっ!」と一声鳴いて、満の
反応が収まった。
「はぁっ……はぁっ……薫……まだ続けるの?」
「終わってほしい?」
 素っ気無く返してきた薫に、満はぎこちなく首を横に振った。
「でも、わたし…もう……」
「続けるわよ」
 薫がそれ以上満に有無を言わさず、汗ばんでいる上半身を白蛇のように妖しくくねらせた。
瑞々しい十代の少女の乳房が、卑猥な分泌液にまみれ、摩擦抵抗の無い状態ですり合わせ
られる。
「ひあぁぁ……」
 満が頭を仰け反らせて、白い喉を覗かせた。そこへ、薫が口を近づけ、つーっと舌を這わせ
た。途端にビクンッ!と満の裸身が跳ねた。
「ふあぁんっ、ダメ……薫……気持ち良すぎておかしくなりそうっ……」
 ビクンビクンッと腰が痙攣を始めている。しっかりと股を閉じていないと、すぐにも膣内で快感
が沸騰してしまいそうだった。薫の手と重ねた掌にも、ぎゅっと力がこもる。それを抵抗の気配
と取ったのか、薫が両腕を強張らせて、満の両手をダンッッ!と床に叩きつけるように押さえ
込んだ。